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最初の1週間に見るトランプとイスラエル2017.1.29

在イスラエル・アメリカ大使館

Agamon Hula より

就任して1週間が経ったトランプ新大統領。オバマ前大統領時と比べると圧倒的に少なかった就任式の参加者を「過去最高の人数だった」と豪語したり、メディア批判を早々から展開したりと世界に話題を振りまいています。今回は26日のFOXニュースで大統領がイスラエルに関する発言を行ったので、それを中心にトランプ氏の対イスラエル関係を見てみようと思います。


パレスチナ問題については意外と穏健派かも・・・

さて日本ではあまり知られていませんが、トランプの外交面でのマニフェストの1つに現在テル・アビブにある在イスラエル・アメリカ大使館をエルサレムへ移設するというのがあり、これには就任前からアラブ諸国が強い懸念を示すなど、対イスラム国(IS)と並んでトランプの中東外交における重要なポイントとなっています。そんななかトランプ氏は26日、保守的・共和党寄りのFOXニュースのインタビューに応え、イスラエルとの協調関係を強調する一方「大使館のエルサレム移転については時期尚早であり、現在の段階で話すことはない」と発言、慎重な態度を見せました。今週初めにはスパイサー米大統領報道官が会見で「意思決定するための初期段階であって未だ決定事項ではない」と記者の大使館移転に対する質問に答えており、トランプ政権がエルサレム移転を強硬に進めようとしている訳ではないというのが見えてきました。

実は就任直前、トランプ氏はイスラエルの無料紙イスラエル・ハヨムに対し「エルサレムについての約束(=大使館移転)についてもちろん忘れたわけではない。私は約束を破るような人間ではない」と話していたようで、イスラエル国内では親トランプ派(タカ派)の政治家やジャーナリストを中心に「結局は歴代の共和党の大統領が行ってきたリップサービスか」と批判の声が上がっています。また最近報道されたパレスチナ自治区に対する2億2000万ドル(約250億円)の支援を打ち切る方針だというニュースに対しては、「これからどうなるかが見えてくるだろう」との発言に終始し、明言を避けました。これに関しても、トランプ政権になって親イスラエル政策の期待を膨らませていたイスラエルの関係者たちからは落胆の声が。 過激な発言が売りという事も手伝って、就任後すぐに大使館をエルサレムに移しパレスチナ自治区への援助も停止するのではという予測もありましたが、意外と現実的な中東外交を進める「標準的な共和党の大統領」となるのかも知れません。選挙期間中から、アメリカ史上最も親イスラエルな大統領になるのではという声が強かった分、これから中東では良くも悪くも「意外と穏健な大統領」として映っていくかもしれませんね。 (トランプ大統領とイスラエル・ユダヤの関係はこちら


「トランプの壁」のモデルはイスラエル?

このFOXニュースのインタビューでトランプ大統領はメキシコ国境に壁を建設するマニフェストにも言及、アメリカはイスラエルに学ぶべきという発言をしました。「安全保障のためには壁が必要なのだ。イスラエルに聞いてみるとよい。彼らは大量の不法移民という問題に直面していたが、壁を建設した結果99.9%防げるようになった」と述べ、イスラエルを引き合いにメキシコとの国境に壁を建設し不法移民取り締まりを強化する姿勢を明確にしました。

大統領がここで言及した分離壁とは西岸地区のものではなく、2013年にエジプトとの国境にイスラエルが建設した壁・フェンスのことです。内戦の続く北スーダンやエリトリアを中心にアフリカ諸国から、半年間で約1万人の移民がエジプトから不法にイスラエルに入国していましたが建設後は半年で34人と激減、アフリカからの不法移民の流入を防止できるようになりました。この成果からトランプ氏は、メキシコ国境の壁について語る際にはたびたびイスラエルを見本とするというメッセージを、大統領選中から発し続けてきました。

現在イスラエル内のガザとヨルダン国境部には、様々な侵入感知センサーを取り入れたスマートなフェンスが設置されており、開発したマガール社のオーナーもトランプの壁に自社のフェンスをと売り込みをしている様子です。そうすると国境の壁と言ってもフェンスとなり、トランプ大統領が公約し私たちがイメージしていた「万里の長城」とはかなり違う「普通によくある国境のフェンス」になるのかも知れません。

現在のエジプト国境部のフェンス(左)とマガール社の開発しているフェンス(右)

commons.wikimedia.orgveeconmagal-s3.com より


今後どうなるか分かりませんし、トランプ氏は実際に大使館をエルサレムに移し宇宙からも見える万里の長城をメキシコ国境に本気で建設するのかも知れません。しかし就任から1週間での感触は過激な発言は残っているもののマニフェストの過激さは少し丸みを帯び、イスラエルの狂信的なトランプ支持者やタカ派の間では、期待外れ感がすでに広がっているようです。


「バラガン」とはごちゃごちゃや散らかったという意味のイスラエルで最もポピュラーなスラングです。ここでは現地在住7年のシオンとの架け橋スタッフが、様々な分野での最新イスラエル・トピックをお届けします。



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