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地球は5700歳なのか?~イスラエルにおける進化論~2017.10.31

マアラット・ネティフィーム

tripadvisor.com より

最近、イスラエルではある鍾乳洞での出来事が議論を呼んでいます。 エルサレムから車で1時間ほどの場所にある「マアロット・ネティフィーム(鍾乳洞)国立公園」で、看板の説明に書かれていた鍾乳洞形成の年代「500万年ほど前」という箇所が何者かによって消されていたことが、ある訪問者のSNSでの指摘により判明しました。またこの訪問者は自身のアカウントで国立公園入場時に上映される紹介ビデオにも言及し、 「500万年前」という具体的な年代が言及されず
「マアロット・ネティフィームは何年も前から形成され始めました」
とオブラートに包んだような説明がされている事を指摘。このFacebookの投稿から「ユダヤ教への配慮かそれとも科学的事実か?」という論争がイスラエルでは巻き起こっています。


アメリカなどでは「創造主が7日間で天地を創造された」という創世記のエピソードが実際に数千年前に起こったと信じている宗教的人口が、数年前までは過半数でした。また中東のイスラム教色の強い国では、コーランの天地創造論に反する進化論やビッグバンなどの科学教育には保守層を中心に未だ根強い反対があります。


この騒動を受けイスラエル大手紙「イェディオット・アハロノット」は国立公園内でインタビューを行ったのですが、やはり黒いキッパ(縁なし帽)を被ったユダヤ教超正統派からは科学に基づいた説明に対する反対の声が相次ぎました。彼らは聖書に書かれている年数を基に計算された天地創造を紀元とするユダヤ暦を地球年齢として信じており、今年はユダヤ暦5778年。数百万年前という鍾乳洞の年代自体がユダヤ暦の年数を大きく超えており、「地球は約5000年前に神によって創造されたのだから500万年前という看板には同意できず、異端的な説明がされている事に気分を害している」との意見が多く聞かれました。問題となっている看板の年代を消したのも、彼らのような過激な超正統派によるものではと報じられています。

地球5700年説を信じ、500万年前という鍾乳洞の説明書きに反対する超正統派たち

ynet.co.il より


それに対し、世俗派の訪問者からは鍾乳洞の歴史が500万年前から始まったという説明に対して同意の声が圧倒的多数で、超正統派の圧力により今後も科学的な事実が隠ぺい・検閲されていくのでは、と危惧する声が上がっていました。
また世俗派だけではなく、正統派の訪問者の多くからも科学に基づいた数百万年前という説明書きに対し賛同する声が多数派でした。この超正統派と正統派の違いの背景には、創世記の天地創造を字義どおりに解釈する超正統派と、モダニズムと信仰との両立を標榜する多くの正統派の間では天地創造のエピソードが比喩的に解釈されている、という大きく異なる聖書解釈があるようです。


同紙の取材に対し国立公園は科学的な見解を支持しつつも、「全てのイスラエル人口に対する配慮をするため十分協議し対策を考えたい」との回答をしました。この配慮を前面に出した声明には、イスラエル国内で人口増加を続ける超正統派が国立公園の大きなターゲット層になっていることへの宗教的配慮ではないかと考えられています。もし彼らが信じる字義通りの創造論に相反するような科学的説明を積極的に行えば、超正統派の訪問客が減少し経済的な打撃は避けられません。「科学的真実は否定はしないが、超正統派の神経も逆撫でしたくない」というのが本音なのだと思います。匿名で取材に応じた国立公園のガイドは、「超正統派の家族やグループのガイドをする時は公式ビデオのように『長い年月』という表現や、ユダヤ暦の5700年を超えないように『何千年も前』と説明している」と語ったそうです。


このニュースに対しイスラエルの識者たちの間では、イスラエルの科学教育を危惧する声が上がっています。ある中学校の理科教諭へのインタビューによると、(正統派や超正統派などの)宗教的な中学校では多くの教師が生徒や保護者からの苦情を恐れ、進化論や地球の成り立ち等のデリケートな内容については「少し触れる程度」というのがほとんどのようです。これら科学的な一般知識を学ばずに育っていく若者が多数という状況に、テル・アビブ大学の理学部教授は「多くの生徒が大学の授業で初めてダーウィンや地球形成を学ぶ、という状態が各大学で起こっている。イスラム教国として有名なイランでも、国からの認可を受けた学校では地球誕生が46億年前だと教えられているのだ」とメディアに話しました。


科学的説明を支持する世俗派(右上)や正統派の人たち。左下は洞窟を研究しているヘブライ大学の教授。

ynet.co.ilreshet.tv より

しかし、だからと言ってイスラエルで教育を受けた若者たちが最新の科学に取り残されているわけではありません。技術大国、中東のシリコンバレー、そして柔軟な思考と独創的な発想。進化の鍵を握るDNAを自由にあやつるバイオ技術を、進化論を教えることに消極的なイスラエルや米国がリードしているところを見ると、進化論を学校で教えないことが、若者たちを台無しにしている、と必ずしも言えるわけではないようです。


理系・文系共に強く技術の最先端を行く世俗的な人々や正統派がいる一方、「地球は5700歳」と真剣に信じ、生物の進化を全面否定する超正統派が共存するイスラエル。 ユダヤの伝統には「トーラー(律法)には70の顔がある」という多様性を指す諺がありますが、現代イスラエルにも70の違う顔があるようです。

「バラガン」とはごちゃごちゃや散らかったという意味のイスラエルで最もポピュラーなスラングです。ここでは現地在住7年のシオンとの架け橋スタッフが、様々な分野での最新イスラエル・トピックをお届けします。



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