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WBCでのイスラエル旋風を『現地』から見る2017.3.12

WBC公式ツイッター」より

前評判を覆しての日本の3連勝や韓国の1次ラウンド敗退も大きなニュースになりましたが、今のところ今大会1番の驚きは1次ラウンドを3連勝で通過した世界ランキング41位のイスラエルだと思います。代表選手のほぼ全員がマイナーリーガーという事もありダークホースとして挙げられることはありましたが、ここまでの快進撃はまさに予想外でした。そんな韓国・オランダ・台湾という強豪国を破るというジャイアントキリングに、最も衝撃を受けているのが地元イスラエルです。


というのもこちらではスポーツと言えばまずサッカーかバスケットボールで、野球はルールさえ知られていないようなマイナースポーツ。なのでWBC開幕前には全くニュースになっていませんでした。そんななか初戦で世界ランキング3位の韓国を破るというサプライズを起こすと、 連勝で迎えた第3戦ではクリーンアップにメジャーリーガーが揃うオランダにも勝利。 全勝で1次ラウンド通過を決めると、現地イスラエルのメディアでも史上初の快挙と して取り上げられるようになりました。いまイスラエルでは史上初めて野球というス ポーツが話題になるという「歴史的な出来事」が起こっています。


しかし日本のメディアでも報じられているようにWBCイスラエル代表のほぼ全員がイスラエル国籍を持たないユダヤ系アメリカ人。そんな事実もあるためかイスラエルでは、試合内容や結果以上に話題となっているのが「彼らは私たちの代表なのか?それとも何ら関係のないアメリカ人の寄せ集めなのか?」という問題。イスラエル大手紙イディオト・アハロノトの行った調査によると、7割弱が自国の代表として温かく見ている反面、3割の回答者が否定的な回答をしており、ある大手紙でも「彼らはヘブライ語で挨拶もできず国家も歌えない。ユダヤ人ではあるがイスラエル人ではないのだから、国の代表として応援するのはいかがなものか」というようなコラムが見られるなど、意見は割れています。


そんなイスラエル国内の世論を受けジェリー・ウェインスタイン監督は取材に応じ「私の願いは10年後、イスラエル人の監督とイスラエル人の選手を連れて再びここに戻ってくることだ。いま私たちには野球をイスラエルで普及させるという使命が与えられている。(2次ラウンドで)私たちが野球大国であるキューバや日本に善戦するという事だけでイスラエル国内の野球に対する関心を高められるのだ」と述べ、イスラエルのために戦っていると強調しました。また未だに反ユダヤ主義の風潮が残るアメリカ社会にも触れ、ユダヤ人という民族的アイデンティティーを共有する仲間が集まり自らのルーツであるイスラエルのため、一丸となってプレイする機会は特別なものなので1試合でも多く試合を続けたいと意気込みを語ってくれました。


国家斉唱時に宗教的民族衣装であるキッパを被る選手たちのビデオをアップし代表を激励するネタニヤフ首相

公式ツイッター」より

またオランダ戦で先制のタイムリーツーベースを放ったファーストのフレイマン(レッドソックス=マイナー契約)も、「世界の前でイスラエルやユダヤ人の代表として戦えるという事は特別で大変な名誉だ。私たちの世代がイスラエルでベースボールの種を撒くパイオニアになりたい」とインタビューに答えました。


イスラエル以外に住んでいるユダヤ系の人たちはやはり心のどこかでユダヤ人としてのアイデンティティーを持っており、イスラエルと聞くと特別な感情を持つ人は多いです。またプロ野球選手のなかでユダヤ系はまだまだマイノリティなため、グラウンドで見かけるとお互いに必ず挨拶するなど日頃から仲間意識があります。そんな彼らが1つになってユダヤ人のシンボルであるダビデの星を胸に付けプレーする、これは他の代表国とは違う強い結束力です。そのうえ祖国であるイスラエルにベースボールを根付かせるという使命感も持っているのですから、代表としてのモチベーションはかなり高いのだと思います。


2次ラウンドのためメジャーキャンプに参加している選手を2人招集したイスラエル代表。「WBC史上最大の番狂わせ」はどこまで続くのか、侍ジャパンの戦いと共に目が離せません。


「バラガン」とはごちゃごちゃや散らかったという意味のイスラエルで最もポピュラーなスラングです。ここでは現地在住7年のシオンとの架け橋スタッフが、様々な分野での最新イスラエル・トピックをお届けします。



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