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イスラエル独立記念日2017.5.4

さて今回は5月1日の日没から2日の日没にかけてイスラエルで祝われていた、独立記念日について紹介したいと思います。

■ 敬虔なユダヤ教徒は独立記念日を祝わない!?

似て非なる超正統派(左)と正統派のユダヤ人(右)

「ユダヤ人の国家ができた日なのだから、最も敬虔なユダヤ教徒たちは率先して独立記念日を祝うべきでは」と思われる方が多いかと思いますが、黒い帽子・キッパに黒いスーツに身を包んだ「超正統派」と呼ばれる人たちは、この独立記念日を祝う日べきだとは考えていません。なぜなら、現代のイスラエルという国が聖書に基づかない世俗的なシオニズムという思想によって建国されたからです。シオニズムの父であるヘルツェルは反超正統派として有名で、彼の死後もシオニズムやイスラエル建国に携わった主なリーダーの大半は世俗的なユダヤ人たちでした。
超正統派の間では、旧約聖書の預言にあるように神自らの手によってイスラエル民族は祖国の地に導き救われるべきであり、人の手によって建国された世俗的な現代イスラエル国家は、『神への冒涜』というのが一般的な見解。よってシオニズムやイスラエルへの愛国心という特徴を持つ「正統派」とは対照的に、「超正統派」の多くは独立記念日を忌み嫌っているのが驚くべき現実なのです。
そんな独立記念日に彼らは何をしているのでしょうか。法律により独立記念日の日に授業を行う事は禁止されているのですが、超正統派の多くの学校では『特別活動日』という名のもと通常の授業が行われています。また過激な超正統派たちの間ではイスラエルやシオニズムに反するデモが行われたり、神の意図に反するイスラエル国家に対しての抗議・悲しみの意味を表す黒い旗を掲げられたり、さらにはイスラエル国旗が公共の場で焼かれるなど、様々な形でイスラエルやシオニズムに対する抗議行動が行われています。
ユダヤ人国家の独立を超正統派のユダヤ人が祝わないというのは一見おかしな話ですが、その裏には複雑な事情があるのです。


■ 戦没者追悼記念日からの独立記念日

戦没者記念日午前11時のテル・アビブの中心地

haaretz.co.il」より

約2,000年ぶりにできたユダヤ人国家の誕生を祝う独立記念日の前日は戦没者追悼記念日といい、48年の独立戦争以降イスラエルを守るために命を落とした兵士やテロによる犠牲者を追悼し国中が喪に服すことになっています。今年は4月30日の日没から独立記念日が始まる5月1日の日没までが追悼記念日でした。
日没後の夜8時と翌日の午前11時に国中でサイレンが鳴り(超正統派やアラブ人を除く)ほとんどのイスラエル人が黙とうを捧げる他、この1日はテレビやラジオをつけても明るい娯楽番組やアップテンポな歌などは自粛され、追悼や戦争に関するドキュメンタリーが放映されます。また追悼日に入る日没直前の7時にはスーパーやレストラン、映画館が閉まるなどまさに国中が喪に服す様子が見られます。
ではなぜ戦没者追悼記念日がわざわざ独立記念日の前日になったのでしょうか。
実は建国から1年経った49年、イスラエルは第1回目の独立記念日を迎えようとしていました。当時イスラエル軍のチーフラビだったシュロモ・ゴレンは独立記念日の3日前になり、イスラエル建国のために戦い失われた命を追悼する日がまだ決められていない事に気付き、申し立ての結果急きょ独立記念日が追悼日を兼ねるという決定がされました。しかし「喪に服すための追悼日が独立記念日という祭りの一部になってしまうのはどうか」と遺族などから大きな反対があり、また政府内でも両者のコンセプトが全く違うため追悼日を別に設定する必要があると協議が始められました。そして1951年、初代首相ダビッド・ベングリオンにより戦没者記念日が正式に制定されました。「私たちが手にしている独立が誰の手によってもたらされたのか、祭りの日であっても記憶しなければならない」とベングリオンは言い、戦没者追悼記念日を独立記念日の前日に決めたといわれています。
現在でも追悼記念日の数時間後には独立記念日のお祝いで街中がお祭り騒ぎになるので、不謹慎だとして追悼日を別に制定するよう求める声も根強くあります。しかしイスラエル人の持つこの切り替えの早さが歴史的に彼らがここまで生きて来れた強みであり、イスラエルらしさなのかも知れません。

独立記念日の夜にライトアップされるテル・アビブ市役所

haaretz.co.il」より


■ 世界聖書クイズで30年ぶりに世俗派の高校生が優勝

日没後の夜には街で花火が上がるのを見物し、市役所前の中心部などで行われる有名アーティストによる無料ライブに朝まで繰り出し、少し休んで昼からは空軍の展示飛行を見ながらバーベキュー、というのがイスラエリーな独立記念日の過ごし方。
しかし独立記念日にはもう1つの有名な国家的行事があります。それが世界中に住むユダヤ系の高校生を対象にした青少年世界聖書クイズです。
世界中のユダヤ系の学校から選抜された数千人の高校生により各国での予選が行われ、勝ち抜いた39か国70名の高校生が独立記念日にエルサレムで行われた本戦に出場しました。この大会は1963年から毎年行われており今年で54回目なのですが、過去の大会ではイスラエルの正統派の学校で学ぶ学生が優勝するのがほとんどでした。しかし今年の独立記念日ではなんと約30年ぶりにイスラエルの世俗派の生徒が優勝しました。2位には正統派の高校で学ぶ女子生徒が、そしてベラルーシのユダヤ系学校ではなく一般的な学校で学ぶ女子生徒が3位になりました。
イスラエルでは宗教的でない世俗的な学校でも聖書が必須科目になっており、小学校1年生から高校3年までの12年間最低でも週に1時間は聖書の授業があります。しかし宗教的な学校になればなるほど聖書の授業時間数も増えるので、世俗的な学校の生徒が優勝するのはまさに歴史的快挙です。シオニスト連合(左派・世俗派政党)のヘルツォグ党首は祝福の言葉を寄せ、「この世俗派の学生による30年ぶりの優勝は、聖書が左派・右派、宗教的・世俗的などを超えた民族の宝である事を私たちに再確認させてくれた。ベングリオン首相が言った通り、私たちは聖書を世々代々にわたり受け継がなければならない。」との声明を発表しました。
世俗派の学生の優勝といい、世俗派政党の党首の声明といい、イスラエルと聖書はやはり切っても切り離せないのだなと改めて痛感しました。

優勝した男子生徒に聖書を渡すネタニヤフ首相

イスラエル首相公式ツイッター」より


「バラガン」とはごちゃごちゃや散らかったという意味のイスラエルで最もポピュラーなスラングです。ここでは現地在住7年のシオンとの架け橋スタッフが、様々な分野での最新イスラエル・トピックをお届けします。



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