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7月が1月? ユダヤの正月― 2019.9.27

ロシュ・ハシャナ前になると、町のシナゴグで角笛を吹くレッスンが・・・

news.walla.co.il より)

もうすぐ(2019年では29日日没)イスラエルでは、ロシュ・ハシャナという新年の祭りになります。今回はそんな「イスラエルのお正月」を紹介できればと思います。


7月1日が元旦に?

ロシュ・ハシャナ(直訳:年の頭)は聖書の祭りでしょうか?

答えは、YesでもありNoでもあります。聖書には、ロシュ・ハシャナの日を「安息の日とし、角笛を吹いて記念する聖会を開け」と書かれています(レビ記23章・民数記29章)。しかし聖書によるとこの祭りは7月1日となっており、新年1月1日ではありません。聖書的には、過ぎ越しの祭りのある月が「第一の月であり、年の正月とせよ」とあり、これを1月にするとロシュ・ハシャは7月1日になる訳です。

では7月1日が、いつ1月1日になったのでしょうか。そのヒントは、西暦200年ごろに編纂されたユダヤ文献「ミシュナ」にあります。ミシュナの中に「ロシュ・ハシャ」という一編があり、そこには「ユダヤ暦には4つの新年がある」と記されています。7月(ティシュレイ)の1日もその1つに挙げられており、そこから7月1日がお正月に変化していったと考えられています。

そしてこの7月が1月になった理由には、バビロニアの影響があります。バビロン捕囚などバビロニアがユダヤ人たちに与えた影響は大きく、ユダヤ暦の月名は全てバビロニアで使用されていたアッカド語に由来しています。そして、ロシュ・ハシャのある月ティシュレイは、アッカド語で「初め・始まり」を意味する「タシュリトゥ」から来ているのです。ロシュ・ハシャが、7月1日から元日になったにはそんなバビロニア的な背景があるのかも知れません。

暦をはじめユダヤ人に様々な影響を与えたバビロニア文化

livius.org より)

多彩な顔を持つロシュ・ハシャナ

そんなロシュ・ハシャには、以下のような様々な霊的な意味があります。 (小難しいは嫌!!という方は次の見出しへ・・・)

1つ目は神を王として迎えるという、戴冠の日という一面。聖書によると神と人(特にユダヤ人)は創造者・被造物という関係でもあると同時に、王である神と国民である人という君主・国民の関係性でもあります。そこでユダヤ人は毎年この日、神を王位につけ角笛というファンファーレを鳴らして王を迎える訳です。ロシュ・ハシャナは新年でもあり、同時に神という王と国民との間の契約更新の日と言ってもいいかも知れません。

そして2つ目は神が最初の人アダムを創造した日、人類の誕生日というものです。聖書には最初の人アダムとエバが第6日に神によって創られたと書かれており、ユダヤの伝統ではこの第6日がロシュ・ハシャナの日だったと考えられています。神は様々な動物を創造しましたが、神を王と受け入れる事ができる自由意志が与えられたのは人だけ。そうすると、人が創造された日は「神=王/君主・人=国民」という、上記の関係性ができた日でもある訳です。

新年はアダムが創造された日でもある

wikipedia.org より)


3つ目の意味が神が人を裁く、「審判の日」という側面です。しかしこれは皆さんご存知、生前の行い全てが裁かれる最後の審判ではなく、神が新しい年になったのに伴い前の年の行いが裁かれるというもの。ちなみにヘブライ語で「審判の日」と言うとロシュ・ハシャナの事を指し、最後の審判は「大審判の日」というような言い方をします。ユダヤの伝統では、ロシュ・ハシャナに旧年中の善行・悪行が裁きに掛けられ、10日後の大贖罪日(ヨム・キプール)に判決が下されるとされています。そして少し余談になりますが、ミシュナからユダヤ教には、「羊飼いである神が、羊のように前を通っていく人を裁いていく」という信仰があるのですが、これはイエスが最後の審判を羊飼いと羊・やぎになぞらえているのを連想させます。


ユダヤのおせち料理

ユダヤ版おせち料理

シオンとの架け橋Facebook より)

そんな日本のお祝いムードとは違い、深く恐ろしい(?)意味のあるユダヤの元旦ですが、様々な意味の込められたおせち料理を食べる、という点でも似ています。そんなユダヤのおせち(シンボル/スィマニーム)を最後にご紹介。

1.リンゴと蜂蜜
まずは最もメジャーなこちらのコンビです。(イスラエル産のつがる・ふじほど甘くない)リンゴを蜂蜜につけて頂きます。「甘い(=良い)1年になるように」との願いを込めて食べるのですが、この2つは違った2種類の甘さ(幸せ・良い事)を意味しています。リンゴは鮮やかな見た目からも甘いと分かるため、一般的に考えられる成功や幸せなどを象徴し、蜂というある意味害虫からできた蜂蜜には不意に訪れる幸運や一見悪い事が好転して甘さを運んで来るように、という願いが込められています。

2.魚
「水の魚のように増え満ちるように」という子孫繁栄を願って。後に「尾ではなく頭になるように」という、京風雑煮の頭芋的な願いも込められ、尾頭付きの魚料理が食べられるようになりました。中東のセファラディー系の家庭では羊の頭の肉を、シチューなどにして頂くようです。(中華料理の豚の丸焼きのような、頭をそのままではありません・・・)

3.ザクロ
実が多く詰まったザクロは613ある戒律の数を象徴しています。そしてロシュ・ハシャナから大贖罪日までの10日間は神によって裁かれる、裁きの期間。という事で、神の前に立ち裁きを受ける際、「神からの恵がザクロの実のように増されるように」と言う願いが込められています。

4.ニンジン
ニンジンはヘブライ語で「ゲゼル(גזר)」といい、裁きを意味する「グズィラ(גזירה)」という単語と似ており、同じ語根から派生しています。良い裁きを迎えられるように、と甘いニンジンの煮物(ツィメス)を食べるのが習慣になっています。

5.リーキ(ポロねぎ) ヘブライ語で「ケレシャ」といい、断ち切るという単語(כרת)と似ています。敵や私たちを嫌う者たちが絶たれるようにという願いとともに、軽く煮て食べるのが一般的。

6.ビーツ
セレック(סלק)といい、この3文字は去る・消えるを意味する動詞の語根になります。敵や私たちを嫌う者すぐに過ぎ去り、消えるようという祈りが捧げられ食べられます。ポロねぎとビーツはもしかすると、キリスト教の迫害や抑圧の歴史から生まれてしまったユダヤ版おせちかも知れません。


「バラガン」とはごちゃごちゃや散らかったという意味のイスラエルで最もポピュラーなスラングです。ここでは現地在住7年のシオンとの架け橋スタッフが、様々な分野での最新イスラエル・トピックをお届けします。



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