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イスラエルのクリスマス事情 2019.12.11

大手旅行代理店のクリスマス特集ページ

issta.co.il より)

聖地なのに全然クリスマスっぽくない…
イスラエルの長期滞在者や12月にここを訪れた人にとっては、ベタな「あるある」ではないでしょうか。日本では、クリスマスを全く感じずにこの時期を過ごすのはかなり難易度が高いですが、逆に聖地イスラエルでは(後述の一部を除き)町を歩いていてクリスマスを感じる事はほぼありません。それぐらいイエス・キリストが実際に生まれたイスラエルでは、全くと言っていいほどクリスマスが定着していないのです。その訳はキリスト教がユダヤ人たちを迫害してきたという悲しい歴史に由来しているのですが、近年イスラエルでもクリスマスに対するスタンスが変わってきています。
今回はクリスマス前という事で、イスラエルのクリスマスネタをいくつか紹介できればと思います。


エルサレムYMCAのクリスマス。敬虔なユダヤ教徒の子供も…

travel.walla.co.il より)

1.聖地から「クリスマスの聖地」へ

実は毎年、数万人のイスラエル人が本場のクリスマスを体験するため、ヨーロッパを旅行しています。近年は格安航空会社(LCC)の参入でイスラエル・ヨーロッパ間のフライトが激増しリーズナブルになった事もあり、クリスマスの時期にヨーロッパ旅行へ出掛けるイスラエル人が毎年のように増えているのです。
ユダヤの秋の祭りスコットが終わり11月になると、大手ニュースサイトがヨーロッパのクリスマスマーケットやお得なフライトなどを紹介。最近のデータによると、イスラエリーの間ではパリ・ロンドン・ベルリンなどメジャーどころに加え、プラハやマドリード、ブダペストの他、クロアチア・スロベニアなどが特に人気のようです。以前はクリスマスセール目当ての旅行という側面が強かったようですが、ネットショッピングが普及した現在ではクリスマスマーケットなど街の雰囲気を感じるというのが、最もポピュラーなクリスマス旅行。旅行代理店の広報担当は取材に対し、「ユダヤの祭りは家庭中心だが、クリスマスなどクリスチャンの祭りは家だけでなく町中が祭りムードになるため、それを体験したいイスラエル人が多いのでは」と話していました。
もちろん宗教的な意味ではなく観光客としてのクリスマス旅行なのですが、2000年近くキリスト教からイエスを殺したとの罪により迫害を受けてきた事を考えると、何万人ものイスラエル人がクリスマスを体験しにヨーロッパへ行っているというのは、驚くべき現象です。歴史によって出来た反キリスト教的なトラウマが少しずつ解消されてきている、とも言えるかも知れません。


賑わうハイファのThe Holiday of Holidays


2.イスラエルでもクリスマスを

クリスマスのため聖地を飛び出す人が増える一方、イスラエル内でもクリスマスを冬の風物詩にしようとの試みが進んでいます。イスラエルで最も民族・宗教間の共存が進んでいるハイファでは相互理解というメッセージのもと、1993年から12月にクリスマスとユダヤの光の祭りであるハヌカを一緒に祝う祭り(The Holiday of Holidays)が開催されています。ハイファで30年以上に渡ってサンタクロースを務める、ニコラ・アブドゥさんの家はイルミネーションと共に開放され、放課後はクリスチャンホームだけでなくユダヤ教やイスラム教の家族もサンタに会いに来るとか。そしてクリスマス前の土曜日になると、このハイファ・サンタを先頭にパレードも行われます。現在では全国から多くの観光客が訪れ、イスラエルで最も有名な12月のイベントになっています。
またイエスが育ったナザレでも、ヨーロッパを模したクリスマスマーケットが開催されています。ホットワインや欧州風のお菓子などクリスマスっぽいものから、ケバブ・ショワルマなど中東料理の屋台まで数十店が出店。また町の中心部にあるホテルでは、クリスマスマーケットの他に40年以上続くハンドベルのコンサートが開催される予定で、こちらもハイファ同様様々な媒体で特集され、冬の風物詩になっています。
イスラエルの首都でもあるエルサレムでは、宗教的ユダヤ人が多いため北部のハイファやナザレに比べると小規模ですが、YMCAや旧市街にあるルーテル派の聖堂でクリスマスマーケットが行われています。マーケットに来るのは海外からのクリスチャン(観光客や留学生)地元のアラブ人クリスチャンが中心ですが、最近は世俗的なユダヤ人やイスラム教徒のアラブ市民、なかには宗教的なユダヤ人家族の姿も少数来場しており、年々宗教間の理解が草の根で進んでいるのを感じる事ができます。
今後もイスラエル社会において、クリスマスの受容は進むのではないかと予想されています。


欧米はもちろん、日本でもよくあるホテルのクリスマスツリーだが…

www.25ans.jp より)


3.クリスマスツリーでコシャー認定剥奪?

しかし同時に、そんな流れに逆行する動きも見られます。イスラエルの多くのホテルではクリスマスツリーやリースなどがこの時期になっても全くないのですが、これには「コシャー認証」というユダヤ教の事情があります。コシャーとはユダヤ教に則った食事を意味し、それに沿った食事を提供するホテルは国の宗教機関(ラビ機関)からコシャー認証を取得しています。数年前までコシャー認定があるホテルに対し、12月になると国の宗教機関が「クリスマスツリーなどをホテルに飾らず、顧客の要請があったとしてもクリスマスに関する催し物を一切開催してはならない」との通告をしていたのです。ツリーを飾った場合はコシャー認定の取り消しも辞さない、との内容でした。
現在この通告は行われていないようなのですが、大手ニュースサイトの取材によると未だに多くのホテルがクリスマスツリーはもちろん、クリスマスパーティーを目的とした予約なども受け付けていません。ツリーを飾ればコシャー認定を担当するラビたち(聖職者)の反感を買ってしまい、毎年やって来るコシャー認証の更新難航や最悪の場合、認証取り消しになってしまうことを恐れているのです。
イスラエルホテル協会の広報担当は大手ニュースサイトの取材に、こう答えていました。
「エルサレムは神聖な町ですが、それは私たちにとってだけではありません。キリスト教徒やイスラム教徒にとっても特別な町なのです。冬に海外に行けば、クリスマスツリーとハヌカの祭りのキャンドルが一緒に飾られているのを目にし、私達の宗教と祭りが尊重されているのを感じることができ、嬉しくなるイスラエル人は少なくないでしょう。しかしその反面イスラエルでは、キリスト教へのリスペクトが欠けているのが悲しい現実です。将来、クリスマスに来られるクリスチャン旅行客がイスラエルのホテルで、まるで我が家のように聖夜を過ごす事ができるよう、願っています。」

クリスマスへの歩み寄りと根強い拒絶が混在する、聖地。
イスラエルのクリスマスが今後どうなっていくのか― 注目です。


「バラガン」とはごちゃごちゃや散らかったという意味のイスラエルで最もポピュラーなスラングです。ここでは現地在住7年のシオンとの架け橋スタッフが、様々な分野での最新イスラエル・トピックをお届けします。



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